キングコング西野氏の卒業生に送るスピーチがタイムリーに刺さった
こんばんは。中小です。
気持ち新たに令和(一発で変換できない!)を迎えようとしている今日この頃。
youtubeのトップで少し気になる動画を見つけました。
まずはこちらを見ていただきたい。
- 正直に言えば、「笑ってやろう」という気持ちでクリックした
- 冗長気味なアイスブレイク。未だ俺は笑っている。
- これまた長い自己紹介
- 「それっぽい、いい話をして終わります」
- 何が刺さったのか
- 人生の先輩が言う過去は自分にとって未来だった
- やっぱりお笑い芸人って凄い
正直に言えば、「笑ってやろう」という気持ちでクリックした
「キンコン西野? あー良く知らないけど、ネットで記事が出るたびに叩かれてる人ねw伝説のスピーチとか書いてあるけど、盛大にすべったのかなwどれどれ・・・」
動画を見つけてクリックした瞬間は、正直こんなことを考えていました。
お笑いを好きになったのってここ数年の話なので、キングコングさんがTVに出まくっていた時代を知らないんですよね。はねとびも見ていなかったし。
最近はTVでコンビで見ることもないし、やれ絵を描いて叩かれ、個展を開いて叩かれ、クラウドファンディングを募って叩かれ、という表に出てくれば炎上という印象しかありませんでした。
笑ってやろうという気持ちでクリックした結果、タイムリーに心に響く言葉を貰えるなんて・・・。
キングコング西野氏、申し訳ございませんでした。
冗長気味なアイスブレイク。未だ俺は笑っている。
『現代の革命家が卒業生に送る』というスライドから動画は始まります。
ずらずらと並べられる輝かしい経歴。
(2000年代初頭に取ったものばかりじゃねーかwそもそも現代の革命家って何w)
未だ俺はにやついています。
紹介スライドが終わると、舞台袖からさっそうと西野氏が現れました。壮大なスライドから一転、歓声も拍手もまばらでうら寂しい。
あまり歓迎ムードではないことを察知したのか、西野氏は挨拶もそこそこに『コミュニケーションの本質』について語り始めます。
相手の欲しているものを察して空気を読まなければいけない、と。
(学生の反応がお気に召さなかったのかな? 焦ってるw)
マイクを両手で握りしめ、想定外の事態に緊張を隠せないようにも見える西野氏は、長々と遠回しに歓声と拍手を求めてから、「登場をやり直します!」 と舞台袖に消えて行きました。
再度紹介スライド流れ、舞台袖から颯爽と登場する西野氏。大スターが現れたかのように盛り上がる会場。
(今度は歓声と拍手がたくさんあってよかったねw)
西野氏は気分よく話し始めます。
「ノープランで出てきました、キングコング西野でございます」
(いや、ノープランかーいwwwwwwwwwwwww)
冗長なアイスブレイクにスピーチの崩壊を確信していた俺は、見事に西野氏の術中にはまってしまっていたのでした。
これまた長い自己紹介
『えんとつ町のプペル』という絵本を描いたという西野氏。著作の映画化が進んでいるとのこと。
映画の公開日をディズニー映画の公開日にぶつけて、動員数で勝とうとしているらしい。
(あービッグマウスってやつね。そりゃネットで荒れるわな)
ちょっとした冗談に笑いが入るものの、聞き入っているのか興味が無いのか、会場はシーンと静まり返っています。
「西野亮廣はどういうヤツなのかザックリ説明すると、好感度が非常に低いです」
突然放り込まれる自虐ネタにここまでで一番の笑いが起きます。
(空気に耐えきれなくて自虐ネタに走るってどうなんw)
続いて相方の悪口を言い始めます。
「非常に頭が悪い、アホなんだ、嫌いなんだ」
飛行機の機内で起きたエピソードを語り始めます。
(長いしあんまり面白いエピソードでもないな・・・)
相方の紹介が終わると、続いて同期を紹介し始めます。
(へぇ。とろサーモンと同期なんだ。なかやまきんに君w youtube見てますw)
「仲がいいのはNON STYLEの石田くんですね。石田の悪口を言います」
(本題入ってないけどどうなんのこれw もう動画の半分過ぎちゃったんだけど)
だらだらとしょうもないUSJでのエピソードが続きます。オチの到達するまでにかかった時間はなんと4分! 全動画の4分の1を石田くんのエピソードで使ってしまいました。あーあどうすんのこれ。。。
「それっぽい、いい話をして終わります」
アイスブレイクと自己紹介にたっぷりと12分もかけた西野氏。
ノープランと言ったとおり、無理やりまとめに入ろうとします。
(起承転結って知ってるか?)
これにはどこぞのイマジンブレイカーもお怒りです。
「未来を変えることはできないけれど、過去を変えることはできる」
(ん? 雰囲気が変わったな・・・)
スピーチのラスト4分間に、大好きな東京03飯塚氏の大好きな突っ込みを送りたいと思います。
「伏線を回収しているのか! いいお芝居か! お前はいいお芝居か!」
このスピーチのラストは、ぜひ動画でご覧ください。
何が刺さったのか
ここからは、動画を見た前提での内容となります。
まず何が印象的だったかと言いますと、前途ある若者に対して、未来の話ではなくて過去についての話をしたということです。
新しい人生がスタートするまさにその瞬間に、未来でなく過去について考えるという発想は、そんなに簡単にぽんっと出てこないと思うのです。
一斉に前を向いている若者に対して、後ろを見ろと。下手をすれば顰蹙を買うでしょう。少なくとも祝辞の内容としてはあまりにも後ろ向きすぎます。
確かに、言われてみればと納得します。未来はまだ存在しないもの。存在しないものを変えることは出来ない。変えられるのは既に存在する過去だけ。
自分の忘れたくなるような過去が脳裏に過ぎります。たくさんの選択肢があって、たくさん間違えてきました。後悔だらけの人生。それでも前を向こうともがいているんだ。その過去を変えられるだって? 冗談じゃない。
人生の先輩が言う過去は自分にとって未来だった
でも、良く聞いてみると、ここで言う過去はちょっと違うものだと気づきました。
ここで言う過去とは、これまで経験してきたことも含まれるのだろうけれど、きっとこれから無数にあるであろう挑戦を、更に先の未来から見た時に表現する言葉だと理解しました。
過去を振り返れと言っているのでは無く、たとえ失敗しても将来振り返って成功に変えられるんだから恐れるなよ、チャレンジしろよ、と。
過去を変えるという言葉で、見事に若者の未来を祝福しているスピーチだと感じました。
まさに今自分が必要としているエールでした。
若者じゃないけどな!
やっぱりお笑い芸人って凄い
こういう類の話って、スピーチの内容が優れてるだとかそうでないとか、中身についての議論はあまり生産的ではないと思うのです。
誰が、どういう場で、誰に向けて、どういう構成でスピーチをして、どれだけの人間の心を動かしたか、の方が遥かに重要です。
同じ話でもバックボーンが違えば伝わり方も全く異なりますよね。
今回特に胸に刺さった理由としては、「そんな内容を期待していなかった」という側面も大きくあると思います。(失礼ですね、ほんとすみません)
少し大げさに言えば映画のスティングを見た直後、みたいな。
一般に、オチを悟らせないためにはストーリーに綿密な仕掛けが施されます。
今回は、『キンコン西野』というキャラクターが「ノープランです」と言い『12分間のだらだらした前ふり』をすることで、最後の『オチ』がスパーンと気持ちよく胸に響いたということです。
もし話者が違ったら? もし「しっかりとスピーチを練ってきました」と言ったら? もし歓声と拍手を催促する滑稽な姿が無かったら? もしスピーチがきちんと纏まるかどうか聞き手が不安にならなかったら? もし最後のいい話が冒頭から始まっていたとしたら?
おそらく、自分の心はここまで動かなかったでしょう。
このスピーチの構成は、間違いなく自分の様な反応を狙って作っていますね。
完全にしてやられた感がたまりません。
いい小説を読んだ後の様な、いい漫才を聞いた後の様な、いい映画を見た後の様な、すっきりとした気分になれました。
『好感度の低い芸人』のスピーチが公開3日で30万再生以上あってコメント欄で称賛を得てるだなんて、スピーチそのものが『過去を変えることが出来る』を証明していますね。
本当にいいスピーチでした!